本紹介!『百物語』作・杉浦日向子

おすすめの本

概要

どうも本のすけの右京です。今回は杉浦日向子さんの『百物語』を紹介します。

『百物語』は江戸時代を舞台に、ご隠居さんを訪れた人たちが様々な怪異譚を語るというストーリーです。本がとても分厚いので、一見すると京極夏彦さんレベルの濃厚妖怪小説か?と感じてしまいます。

ところがこの『百物語』はいい意味で軽く読める本です。まず『百物語』はそもそも小説ではなく、マンガです。文字では分かりづらい描写や怪異の外見が、上手く描写されています。このお話のどこが怖いのか、物語がどこで展開されているのか、なども分かりやすくなっています。

例えば【其ノ三十一・・・森美作殿屋敷の話】には、「屋敷の裏にある濠に小さな少年が出ることがあるが、あれは河童なのか?」というお話があります。これだけでは変なこともあるものだ、で終わりです。ですが『百物語』では、水の中に佇む少年の絵を描くだけで途端に不気味なお話に早変わりさせているんです。文字だけでは想像できない少年の姿をマンガで表現することで、いかにその少年がおかしいのか、その状況が異常なのかがハッキリと理解させているんですね。

さらに収録されているお話も絶妙に不気味です。妖怪が出る話や後味が良いお話、最後までよくわからないお話に、時には生理的嫌悪感を感じるお話まで。そのおかげで、たまに出る本当に怖い話がより一層恐怖を強めてくるんです。

【其ノ五十五♢其ノ五十六・・・嫌うもの二話】にはこんなお話があります。「あるご隠居さんが臨終の際、なぜか口をパクパクさせている。よく見るとなんと口から黒豆が零れ落ちているのだ。ご隠居さんは黒豆が大嫌いで、人生で一粒も口にしなかったはずなのに。どんどん黒豆は零れ落ちてきて、ついには座敷の畳が真っ黒に染まってしまった。すると太っていたはずのご隠居の体は、半分ほどになっていた。」・・・意味が分からない。なぜ黒豆がご隠居さんの口から出てきたのか、理由も全く分からない。分からないけれど、ありえないことが起こっていることだけは伝わってくるんです。そんな理解できない不気味さも、『百物語』の魅力ですね。

さてそれでは、お次は『百物語』のなかでも個人的に読んでほしいエピソードを紹介します。

おすすめエピソード

【其ノ四十一・・・地獄に呑まれた話】

旅の途中の父子が、地獄谷という場所を訪れた時のお話。この地獄谷には火山の影響で常に沸騰するほど高温の池がある。父親の方がなんとなしに池に指を突っ込むと、不思議なことに何ともない。しかし池から引き抜くと火傷をするほどの熱さを感じてしまう。なぜか快感を感じ始めた父親は、次第には指から手、手から腕全体へとどんどん池につかり始める。その様子を見ていた通りすがりの僧が父親を助けようとするが、父親は満面の笑みを浮かべたまま、池に浸かったまま動こうとしない。この様子はあまりにも惨いと、僧は子どもを連れて立ち去ったとのこと。

不気味なシチュエーションですね。ひたすら子どもが哀れとしか・・・。父親がいったいどうなったのか、全く分からないのも怖いポイントです。

【其ノ七十九・・・他人の顔の話】

ある水油屋主人の話。どうも最近家内や店の者の様子がおかしく、とうとう妻を問い詰めた。すると妻がある手紙を差し出した。その手紙には自分とそっくりの筆跡で、「近いうちに帰る 主人より」と書かれている。質の悪いイタズラだと一蹴した主人だったが、子供の名前を思い出せない、自分の顔も別人のように思えるなど不可解なことに気づく。居心地は悪いが、本物の可能性がある主人が帰るまではいるつもりだと主人は笑うのであった。

急にミステリーサスペンス要素が入ってきました。このお話の良いところは、謎の主人の顔は一切描写されていないところです。自由に読者が謎の主人の正体を考察できますし、結局主人の真偽が分からない、というオチの怖さをより上げていると思います。

【其ノ九十二・・・大楠の話】

ある大きな楠にまつわるお話。元々その楠はある庄屋の家に生えていたが、娘の結婚が決まった祝いのため、この楠を鳥居建設に使おうということになった。伐採が決まったその日の夕暮れ、屋敷に立派な侍が訪れ、娘を娶りたいと言うのである。もちろん拒否した庄屋たちであったが、その晩に娘が消えてしまった。なんと娘は楠の中に閉じ込められ、その顔がうっすら幹に浮き出ているのである。どうしても娘を助けることができなかった庄屋夫婦は家を捨て、人々は楠の精が娘を捕らえたのだと噂しあった。それ以降、この楠を伐ろうとするものはいないそうだ。

今までと比べて、ちょっとR18G要素を感じますね。楠がまだあるということは、まだ娘さんは生きたまま閉じこめられているのでしょうか?想像するだけで怖いです。娘や庄屋には何も非がないのに、理不尽な目に合うのも不気味です。突如として降りかかる災難ほど、私たちを恐怖させるモノはありませんからね。最後の楠の絵はとても怖いので、心臓が弱い方はお気をつけください。

終わりに

いかがでしたか?今回は杉浦日向子さんの『百物語』を紹介しました!紹介したエピソード以外にも、たくさんの不気味で面白い話がたくさんあります。独特な絵で描かれる百物語、皆さんも楽しめること間違いなしです!でもマンガだからと言って、子どもにオススメはしない方がいいです。トラウマになること間違いなしなので・・・。それではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました