本紹介!『青い鳥』作・重松清

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はじめに/概要

こんにちは、本のすけの右京です。

今日は重松清(しげまつ きよし)さんの「青い鳥」を紹介します。

「青い鳥」は吃音症でうまく言葉を話せない教師・村内先生が、色々な生徒とのかかわりを通して大切なものを教えるという、短編小説です。

登場する生徒はとにかく多種多様。卒業式に出たがらない生徒や、いじめを傍観していた生徒。元不良の生徒にクラス行動が嫌いな生徒・・・

そんな生徒たちの元へ村内先生がやってきます。村内先生は国語の先生です。道徳の授業をするわけでもありませんし、生活指導をするわけでもないんです。

村内先生がするのは二つだけ。「悩む生徒の傍にいること」、「本気の、大切な事しか言わないこと」だけです。

どれだけ生徒に馬鹿にされたり、拒否されたとしても、先生は生徒を見捨てることはありません。

「先生に、でででっ、できるのは、みんなのそばにいる、こっことだけ、ででででっ、でっ、です」

静かな楽隊より

村内先生は生徒たちに寄り添うことを、決してやめません。

村内先生は吃音、つまり言葉をうまく発することができません。特にカ・タ行は壊滅的と言われるほど。ですがその言葉は常に本気の言葉です。

「ででっ、ででっで、でで……も、本気で、しゃべります、先生がしゃべるのは、本気のこっ、ことだけ、でででっ、です」

青い鳥より

上手く話すことができないからこそ、村内先生が話すときは、嘘やごまかしをふくめません。

村内先生が思ったこと、考えたこと、感じたこと。その全てを、真正面から生徒に伝えてくれるんです。

そんな村内先生へのリアクションは様々。逃げ出す、反論する、無視する、疑問に思う、何も言えなくなる、恨む・・・

そんな生徒たちですが、最後には必ず自分の問題と向き合います。

彼らが抱える問題は、誰もが一度は悩んだり考えたことのあるような、身近な問題ばかりです。皆さんも生徒たちと村内先生を通して、その問題を考えて見ると、楽しいと思いますよ!

さて次はエピソード紹介です!

エピソード紹介

ハンカチ

学校でしゃべることができない場面緘黙症の千葉知子。最初からそうだったわけではありません。入学時の彼女は元気でおしゃべり、でもキツイことも言う普通の学生でした。

ですがある時、ホームルームで彼女の言動に対し、一斉に非難が巻き起こります。まるで晒上げのようです。

その後無理矢理書かされた反省文をみんなの前で読み上げて以降、彼女は言葉がうまく発することができなくなります。

そんな彼女に迫った卒業式。卒業式に出ることを拒否する彼女に村内先生は、出てほしいと伝えるのですが・・・

ひむりーる独唱

平和な学校にある事件が訪れます。クラスの人気者・真田先生が刺されたんです。犯人は真田先生が担当する生徒・斎藤義男。

理由はだれにも分かりません、真田先生にも齋藤にも大きな問題はなかったはずです。

齋藤にも理由は分かりません、どうして自分がそんなことをしてしまったのか、自分でもうまく説明できません。

そんなもやもやをぶつけるように、カエルを殺す日々。彼はそんな自分に嫌気がさします。はっきりと言えるのは、その日から彼の生活は一変してしまった、ただそれだけでした。

そんな彼に、先生はある詩を教えます。明治時代の詩人・草野心平。彼のことを知って知らずか、その詩はカエルをテーマとしたものでした。

おまもり

自転車のひき逃げにあったせいで、入院している清水さん。当然ながら清水さんは「犯人ってサイテー!!」と怒りが増す一方。

しかし、なぜかその言葉に苦しむ人物がいたのです。それは清水さんのお見舞いに来た須藤杏子。もしや犯人は彼女で、バレてしまうことを恐れているのでしょうか?

それは違います。彼女の父親は、実は交通事故で人を殺していたのです。

その事実に向き合い続ける父親と、その父親に納得できない須藤。須藤にとって清水さんの言葉はまるで自分の父親に、そして自分にも向けられているように感じるのです。

そんな須藤はある場所を訪れることを決意します。そこは父親が殺してしまった方の、お墓なのでした。

青い鳥

自殺未遂を起こし、転校した野口。野口はクラスでいじめを受けていました。からかわれたり、パシリにされるなんて序の口。彼はなんと万引きを強要されていました。

後からわかったことですが、彼は自分の両親が営むお店で万引きをしていたのでした。

彼が書いた遺書には、自分をいじめたクラスメイトの名前が書いてありました。発端の井上、その井上に便乗した梅田、その取り巻きにクラスメイト。そして一度だけ野口からガムをもらった園部真一。

そんな彼らのクラスへ村内先生がやって来ます。村内先生は、片付けられていた野口の机を運び込みます。それから以降、先生は野口が教室にいるかのように扱うのです。

当然のようにクラスの雰囲気は最悪、反省文であれだけ友情を大切に、なんて書いたくせに・・・ 村内先生はつぶやきます。「忘れるなんて、ひきょうだなあ。」

静かな楽隊

スクールカースト、どこにでもある学校の見えないランク付け。

そのトップに位置するあやちゃんと、その取り巻きの一人で昔からの仲良しだった中山聡美。

あやちゃんの手にかかれば、気に入らない先生を追い出すことだって簡単。クラスメイトはあやちゃんが気に入るような反応をしないと駄目。言うなればあやちゃん帝国。

そんなあやちゃん帝国に息苦しさを感じる聡美は、ある生徒のことを思い出すようになります。

そんなあやちゃん帝国に村内先生がやってきた。村内先生に悪態を取るあやちゃんに、先生はあることを語りかけるのです。

拝啓ねずみ大王さま

富田洋介の父親が自殺した。会社に無茶な仕事を押し付けられたのが原因らしい。母親も大変そうで、あまりしゃべらなくなります。

今の洋介にとって気を許せるのは一匹だけ。それは父親が買ってくれたハムスター、ねずみ大王。

洋介はねずみ大王にはなんでも話せます。父親のこと、学校が嫌いな事、うっとおしいクラスメイトのこと、自分が学校に脅迫の電話を入れて、駅伝大会を中止させたこと、間近に迫ったクラス対抗のムカデ競争で、同じことをしようと考えていること・・・

全て洋介とねずみ大王にしか知らない秘密。しかし、なぜかその秘密を知る人がもう一人いたのです。

それが村内先生。焦る洋介に村内先生が発した言葉は、洋介によって意外なもので・・・

進路は北へ

進路に悩む篠沢涼子。彼女は内部進学をけって、別の高校に行こうとしていました。

新しく入ってきた学生と、もとからいた学生の間にある微妙な差。そんな息苦しさに彼女は辟易としていたのです。

そんな彼女に最近もう一つ悩みが増えます。その正体は村内先生から出されたクイズ。

「教室の黒板は、東西南北のどちらにあるでしょうか」なんて分かるわけがありません。分かったとしても、それに何の意味があるのか見当もつきません。

村内先生は何を伝えたいのでしょう?篠沢の進路はどうなるのでしょうか?そしてクイズの答えとは?

すべては本編で確認してください!

カッコウの卵

親に愛されずに育ったてっちゃん。似た境遇を持つ智恵子と同棲し、大変な仕事を抱えながらも幸せな生活を送っていた。

そんなある日、てっちゃんはある中年男性を見かける。それはてっちゃんの学生時代の恩師・村内先生だった。

学生時代は荒れていたてっちゃん。そんな彼に寄り添ってくれた村内先生。てっちゃんにとって村内先生は、自分を一人ぼっちにしなかった大恩人だったのだ。

村内先生に会うために学校までやってきたてっちゃん。だが学校の生徒の村内先生を馬鹿にするような言動を聞いてしまい、事態はややこしいことに・・・

終わりに

いかがでしたか?重松清さんの「青い鳥」、文章はかなり素朴で読みやすいです。

ストーリー同士のつながりは、村内先生が出てくるという点以外はないので、途中で切り上げることも簡単。

読書初心者にもおすすめの一冊です。それでは今日はこの辺で。ではまた。

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